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 今回の『告白』文庫版のミスは、たぶんこういう原因によっています。すべて経験的な勘ですけどね。
 この本はInDesignで組まれているはずなんですが(あるいはInDesignと同種の「自動組版機能」を採用しているソフト/マシンで作られてるはずなんですが)、ですので組版技術者さん、InDesignを入れて組版を内製化した中小の出版社の方、InDesignで組む印刷屋を使ってる編集さんあたりはちょっと気にしてください。

 InDesignと仮定するとして(つまり以下の「InDesign」とは「その種のソフト」という意味合いになりますが)、今回のミスはInDesignの「文字組みアキ量設定」と「禁則調整方式」と「日本語段落コンポーザ」との関連を理解していないゆえのミスです。もう少し正確にいうと、それらで自動化される組版に、手作業での変更を加えた場合にどうなるかを知らないゆえのミスです。
 InDesignは、ほっとけばそこそこの文字組みになるように設計されています。ゆえに便利は便利なんですが、でもそれって「ほっとけば」の話なんです。つまりこちらで手を加えてしまうと、いきなり組みが崩れるんですよね。今回のように、極端な文字ヅメみたいなことを平気でやる。つまりそこまでは検知してくれないのがInDesignの「自動組版」だってことです。

 じゃあ今回の『告白』文庫版は、どこでどう人の手を入れたか。版面を見れば分かる人は分かると思いますが、一歯ヅメがまずかったんです。これがInDesignの「自動化」と相性がわるかった。そんでこんなに詰まったんです。

 実際、カーニングなりトラッキングなりを使って、手作業で文字間を詰めることはよくあると思いますが、それをやると、場合によっては文字どうしが重なるという事故まで出ます。それがInDesignだし、InDesignの「自動組版の性能」なんだったりします(正直こんなのソフトのバグだとしかおれは思いませんが)。
 もちろんInDesignなりの組版ソフトで一歯ヅメを行う場合は、文字ごと・行ごとにツメを入れるのじゃなく、文全体にツメをかけるものです。今回のミスの箇所にだけ手を加えてるわけじゃない。むしろ文全体にかけたツメなのでぎりぎりセーフのレベルですんだと、たぶんそういうもんだと思いますが、特定の箇所にツメを入れるとそこだけ字が重なるとか、そういう「自動組版」をInDesignはやります。

 そう話せば分かると思いますが、今回の例はぎりぎりセーフだとしても、その原因が「ソフトへの理解不十分」である以上、このオペレータ/印刷屋に任せるのはやばいという、そういう話なんですよね、今してるの。ものによっては事故に繋がりかねない。
 自社組みを選んだ出版社さん/編集さんもそれは同じで、ソフトへの理解度を高めるかどうかはともかく、一通りきっちりチェックしないと危険なんです、このソフト。

 てことで話を進めると、じゃあこういう危険を回避するにはどうするか?
 その方法はありません。

 ないのがInDesignなんです。だから全体のチェックが必ず必要になる。そういうソフトなんです。
 こういうミスや支障を回避する方法は、あえていえばひとつです。こっちからは何もしない。ぜんぶInDesignにまかせる。
 言い換えれば、組版技術者がこだわろうとすればするだけ、組みが崩れる可能性が高くなるソフトがInDesignだってことですね。

 そういうすべての元凶は「日本語段落コンポーザ(を含む各種コンポーザ)」なる機能です。日本語組版としていちばん綺麗になるように、自動でInDesignが文字組みをしてくれるものらしいんですが、正直、そんなもんはいらないわけです。だって組版するのはこっちなんだから。けども、この機能を外すことができないんですよね。
 なので、「コンポーザが自動で組版したものを」→「アタマからチェックして」→「おかしいところは「禁則処理方式」をいじって直す/手作業で直す」くらいしかこっちには出来ないんだったりします。
 ちなみに、「文字組みアキ量設定」で目的通りのアキ量設定をしても、このコンポーザには無視されます。それじゃ設定のイミがないじゃんか、ですが、アキ量設定を無視したアケ/ツメを勝手に入れてくる。設定をいじればいいるだけ、なおさらややこしい事態に陥る。それがInDesignなんです。

 もひとつ、ちなみに。これは組版内製化でInDesignを入れた出版社(つまり編集さんが組版までするようになった小さなとこ)に多い見落としなので、話しておくと、InDesignていうのはデフォルトでは、書籍組みの仕様になってなかったりします。デフォルトの仕様は雑誌や広告用です。書籍を組む場合には、あれこれ設定を変えないとならないってことですね。
 こういうことを知らないままInDesignを使っている出版社/編集さんはけっこう多いはずで、というのは、見るからに雑誌や広告のような文字組みをしてる本が増えているからです。「あ、この本、InDesignをデフォルトのまま使って組んだな」「この出版社、組版の外注はやめて自社組みにしたな(=儲かってないな)」とすぐ分かる。
 いちばん分かりやすいのは中点「・」の扱いですけどね。ご承知の通り中点「・」は書籍では全角/一倍と決まってますが、雑誌や広告では半角/二分も許容です。雑誌・広告仕様のInDesignデフォルトでは、なので行長調整する場合はまずこの中点を二分ドリベタにしてツメるようになってるんです。

 なので書籍組み用の「文字組みアキ量設定」に変更しないとならないんですが、じゃあいくつか用意されてる「文字組みアキ量設定セット」のどれを選ぶと書籍用になるかというと、なんとこれが選べないんです。そんなセットはないからです。
 ま、組版ルールは出版社によって違うとは思いますが、共通的というか基本的というか、「ともかく書籍の文字組みルールといったらこれ」ていう文字組みセットがInDesignには入ってない。要は自力でオリジナルの文字組みセットをつくるしかないってことですけどね。がーん。
 だいたい編集の仕事だけで十分たいへんなのに、InDesignだかなんだか新しいパソコンソフトまで覚えなきゃならなくて、やたら機能がついてて便利そうだけどぜんぜん使い方が分からないまま、なおかつ「自力で設定まで変える」なんて無茶だ、もう頭からバネが飛び出そうだ、びよーんっ、というのが当たり前な編集さんの本音でしょう。
 けどま、そうしてだましだまし付き合うしかないのがInDesignだったり、自動組版だったりするわけです。




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